物理探査は、生活に必要不可欠な存在の水資源の開発、多くの人々の生活を脅かす地すべり等の土砂災害など、多岐にわたり利用されている調査手法です。
地球システム科学は、様々な国や各方面で培った豊富な経験・実績を有しています。
そのノウハウを生かし、お客様のニーズに合った、最適な各種物理探査手法を提案するとともに、新分野への物理探査技術の活用を探求し続けます。
地盤物性値を直接評価する弾性波探査
人工的に発生させた弾性波を、地表に並べた換振器で捉えることにより、地盤のP波構造を解明する手法です。
P波速度は地盤が持つ強度特性と極めて高い相関があるため、地層の分布状況や、性状を把握するために有効です。
適用例としては、地すべり地における不安定土塊の深度分布、工事に伴う地山掘削等の施工計画等が挙げられます。
また、高密度電気探査を併用すれば、さらに詳細な地盤情報を得る事が出来ます。
平野部の地盤調査に適した表面波探査
平野部における基礎地盤調査では、舗装や騒音に加え、電気ノイズや作業時間の制限等の様々な制約により、弾性波探査や電気探査の実施が困難な場合があります。こうした環境下での地盤調査では、表面波探査が適しています。
表面波探査とは、地表付近を伝わる表面波(レイリー波)が周波数によって異なる伝播速度となる性質を利用して、地下構造を探査する方法です。
弾性波探査と異なり、表層の舗装の影響を受けず、短時間内に多くの測線探査を実施できることなどから、都市部の軟弱地盤調査や空洞調査として多く利用されています。また、N値との相関に優れており、軟弱地盤でのボーリング調査数量の削減など、大幅なコスト縮減に繋がります。
地中レーダーによる詳細な埋設物調査
表面波探査により、空洞や埋設物等の疑いが認められた場合には、さらに詳細な状況を把握するため、地中レーダー探査を実施します。地中レーダーの技術は、平野部での地盤調査のみならず、老朽化したモルタル吹付け法面やダム、河川堤防等の内部構造調査にも活用されています。
自然の微動を利用して地盤構造を推定する微動アレイ探査
地球上のあらゆる地盤は火山活動や波浪、交通ノイズ等が震源となり、人間が感じられない程度の微動な振動を起こしています。この微動な振動は、その周辺の地盤特性などを反映しています。
微動アレイ探査とは、複数の微動センサーにより上記の微振動を同時観測することにより、観測地点直下のS波分布情報を取得し、地盤構造を明らかにする探査手法です。
この探査手法の特徴として、他の物理探査で障害となる「ノイズ」に強く、また人工震源を用意する必要がないことが挙げられます。したがって、簡易かつ環境を損なうことなく探査が行うことが可能で、ノイズ等により他の物理探査では適用が難しい都市部においても探査が可能です。
この探査で得られたS波構造から、地下の堆積層の厚さや基盤岩の深度、またそれらの物理特性を推定することが可能となります。
より詳細な急崖解析断面図を作成できる急崖調査を併用した弾性波探査
地球システム科学では、当社クライミング調査班により行う急崖クライミング調査に、弾性波探査を併用して実施することができます。
これにより、クライミング調査で抽出された緩み流域に対して定量的評価が行え、また、目視調査で分からなかった緩み領域についても弾性波速度の分布から抽出することができます。
急崖クライミング調査より詳細な解析断面図の作成が可能となり、切土のり面の対策工法選定などの詳細資料として活用されています。
より詳細に地盤の物理特性分布を可視化できるジオトモグラフィー調査
一般的な地表型の物理探査と異なり、ボーリング孔間やボーリング孔と地表間で詳細な測定を行い、密度・精度の高い情報を得る探査手法です。
弾性波、比抵抗、電磁波を用いる3種類の方法があります。
得られた情報は、インバージョン解析によって物性分布を再構成し、地下の物理特性分布をより詳細に可視化することが可能です。
地下の比抵抗分布を詳細に可視化する高密度電気探査
電気探査とは、物質によって異なる電気の流しにくさ=”比抵抗値”を測定し地下の構造を推定する物理探査手法です。
地盤のもつ比抵抗値は、地下水の胚胎状況や土質・岩質との高い相関があるため、地下水開発分野や、地すべり調査等の土木地質・防災関連業務といった広い分野で活用されています。
従来地下水分野では、垂直探査や水平探査といった一次元的な手法が主に行われてきましたが、地球システム科学では、二次元探査や三次元探査を積極的に取り入れ、地下の比抵抗構造推定の高精度化を進めています。また、近年ではネパールやブータンなどのヒマラヤ氷河地域でも本技術を活用し、氷河湖決壊洪水という新たな自然災害への対応に貢献しています。
地下水の流れを把握する自然電位法(SP法)
地盤内に人工的に電流を通電させる比抵抗法電気探査に対し、地盤内に潜在する微少な電位差を測定する方法が自然電位法です。
地盤内に地下水の流動がある場合、地下水内の陽イオンの働きにより、極微量の電位差が発生することがあります。逆にこの電位異常を測定すれば、地下水の流動の有無を把握することが可能となります。
地下水開発分野のみならず、盛土堤防内のパイピング(水みち)の有無、地すべり地域内における平面的な地下水流動の把握等を調べるのに有効です。
豊富な経験とノウハウを生かした開発途上諸国への技術支援
開発途上国における地下水開発事業では、財政的な理由から、井戸試掘調査は極めて限定的にならざるを得ません。したがって物理探査による事前調査で、いかに高い開発ポテンシャルを有するサイトを抽出できるかが重要となってきます。
そのためには、各国の水関連機関に従事するスタッフが、適切な測線設定、探査手法検討、解析、評価を行える能力を身に付けることが不可欠です。地球システム科学では、アフリカ、中近東のみならず、中南米、アジア諸国等における物理探査分野の技術協力を行い、地下水開発分野における各国の持続発展に寄与しています。