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モロッコ水物語

下水と排水

 残念なことに、モロッコの下水は未処理のまま放流されている。大西洋岸の大都市はその規模が大きく、海洋排出されている下水量も莫大である。また、中にはSafiのリン鉱石工場のように有害物質の含有量が極めて高いと想定される工業排水までもが大西洋に排出されている。この近海は北から南に沿岸流があり、周辺は黄濁色の不気味な海水となっている。かつてSafiはモロッコでも有数のいわしの水揚げを誇っていたが、工場の排水等のために深刻な汚染が進行し、現地の水産業に大きなダメージを与えている。日本の水産援助には海洋汚染を防止するためのプログラムも必要であると考える。

写真-32.大量の工業排水が大西洋に流入し、汚染されているSafiの海岸

内陸部の都市も基本的な状況は同じであり、下水網は発達しているが、それらは郊外の河川に放流するためのもので未処理のままである。しかも、これらの都市下水は貴重な灌漑用水として利用されているのである。そこで生産されている農作物の安全性に関しては多くの国民が疑問を抱いているが、その成分がどの程度危険なものか私自身もデータを所有していない。また、農作物だけではなく、家畜用のアルファルファも栽培されており、当然これは牛や羊の飼料になる。食物連鎖の過程において、危険物質が濃縮されてゆくことは明確であり、モロッコの農作物や食用肉には原産地証明が必要と考える。

写真-33.フェズ(左)とメクネス(右)の下水はSebou川に流入し、再度飲料水として利用される

内陸都市の下水の問題は、その下水を下流の住民が飲料水として利用しなければならないことである。ワルザザットはEr・Mansoul・Eddahbiダムのすぐ上流に開けた都市であり、この都市の飲料水は当然、このダムから取水されているが、未処理の下水の流入によって、その水質は極度に悪化している。

写真-34.ワルザザットのダムと多量の淡水魚の死体

モロッコの水資源開発はほぼ限界を迎えており、新たな水源の確保は困難な状況にある(ただし、海水の淡水化は別である)。それを補う重要な水資源の一つが下水であるが、無処理のまま排出されている現状を早急に改善することが不可欠である。

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