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実績紹介

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【プロジェクト】タイ国防災能力向上プロジェクト・フェーズ2

JICA国際協力機構 技術協力プロジェクト


タイ国の自然災害軽減に向けて

 2011年の9月~10月にかけて、東南アジアのタイ国は、幾度の台風上陸を受けました。山間部のダムはいずれも貯水容量の限界に達し、放水量調整による治水が行えない状況に陥りました。この間の一連の洪水・土砂災害により、500名近い人命が失われるとともに、日本企業を含む工業団地浸水などによる経済損失は、1兆円近いとされています。
 タイ国は、2002年に、防災全般について責任をもつ、『災害軽減局』を内務省に設立しています。これに対し、JICAは同局の強化を目的として、『防災能力向上プロジェクト・フェーズ1(2006~2008年)』を開始し、弊社はこれを受託して実施しました。
 さらに、フェーズ1の成果促進と普及体制構築のための支援が要請されたため、2010年より『同・フェーズ2』が開始されています。弊社からは、『コミュニティ防災』、『防災教育』、『土砂災害対策』の各専門家が派遣されています。


コミュニティ防災活動普及展開のための訓練

 日本の防災政策の基本理念は、自助・共助・公助の思想です。これらが連携し一体となることで被害を最小化し、災害後の早期復旧につながります。このうち、コミュニティにおける自助・共助の力を向上させ、公助との連携をはかる取り組みがコミュニティ防災活動の推進です。

 タイ国には洪水や土砂災害のリスクのあるコミュニティが国内に約26,000箇所あるとされています。現在、災害軽減局の数少ないファシリテータが、コミュニティ防災活動を支援していますが、膨大な数のリスク・コミュニティの全てを網羅するためには、圧倒的にマンパワーが不足しています。そこでプロジェクトでは、ファシリテータ育成カリキュラムを組み、実地訓練を交えながらこれを育成しています。最終的には300名のファシリテータ育成を目標として頑張っています。


防災行政と防災教育の融合へ

 国や地域の防災能力の向上のためには、教育プログラムに『防災』の概念を取り入れていくことが非常に重要です。これにより、教師から生徒へ、生徒から家族へと、防災啓発が展開していくことも期待されます。

 2006年から開始されたフェーズ1以降、プロジェクトでは内務省災害軽減局と教育省との協力体制構築を図ってきました。もともと全く接点のなかった両省ですが、プロジェクトをきっかけに幾多の障害を乗り越えて、徐々に協力体制が確立されています。地方レベルでも、学校防災セミナーに災害軽減局職員が講師として招待されるなど、密接なコラボレーションが確立されつつあります。フェーズ2では、災害軽減局と教育省の連携をより強化にするための支援を行うとともに、防災教育ガイドライン策定支援や、防災教育モデルスクールの設立など、防災教育の普及展開活動を進めています。


コミュニティのリスク分析・警報システム改善

 タイ国では、各村にミスター・ワーニング(警報)と呼ばれる災害警報発令担当のボランティアが居ます。ミスター・ワーニングは、累積雨量や川の水位を観察し、危険が迫ったときには村長と協力して避難警報を発令します。ところが、ほとんどのリスク・コミュニティでは、危険個所を示すリスクマップが整備されていないうえに、避難警報のための雨量基準や水位基準も、なんら科学的根拠なく定められています。その結果、警報の『空振り』が多く、住民の自主的な避難活動を阻害しています。

 プロジェクトでは、コミュニティ・レベルにおける洪水リスク分析のための技術指導を行うと同時に、試験サイトに、安価な自記式雨量計や水位計を設置し、実際の洪水を引き起こす雨量や危険水位のモニタリングを行っています。コミュニティの既存の能力を最大限活用しながら、警報システムの精度向上に向けて取り組んでいます。

 なお、本プロジェクトは2014年3月まで継続される予定です。




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