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モロッコ水物語

自然シリーズ-山脈の降水量

水資源の問題を検討する場合に最も重要な要因は降水量である。この降水量は季節や場所によって大きく異なり、特に、モロッコでは山間部における降水量や降雪量に関する観測データの入手が非常に困難であることから、実際以上に問題点が誇張あるいは矮小化される傾向にある。しかしながら、アンチアトラス山中のAgadir Ouguejgal村(標高約1500m)ではたまたま知人のアガディール大学の研究者が貴重な植物(ドラゴンツリー)を発見し、その生態を研究していたことから、2000年10月より、降水量のデータを克明に記録していた。その観測方法は非常にユニークであり、村人に単純な計測機材とその観測方法を教え、それを根気良くアラビア語で記録させるだけの内容であった。


図-3.アンチアトラス山中の降水量の変動

降水量の分析結果は、図‐3に示すとおりである。この図では村の年間降水量と1月~4月までの降水量とを比較している。これは2007年の降水量が4月21日で終わっているため、他の年度と条件を同じにしたことによる。図からも明らかなように、同じアンチアトラス山中の村でも、降水量が年によって大きく異なっていることが明らかである。特に、2002年には年間535mmもの降水量があり、このような年にはマトフィーア(雨水貯水槽)の水が1年間確保できるが、2007年は2月から完全に枯渇している。また、アガディール地方の平野部で大旱魃が発生した2000年のデータは3ヶ月分しかないが、それでも降水量は167mmに達している。これに対して、2007年は6月末現在で36mmの雨量しか記録しておらず、旱魃の甚大さを示唆している。

  水源となる山中での降水量が激減することは当然のことながら下流部の河川や地下水への涵養量も大幅に減少することになる。事実、ティズニット県のYoussef Ben Tachifineダムは私が定点観測している過去7年間で最低の水位(貯水率15%)となっており、10月以降の雨季に本格的な降水が無い場合は、その被害は更に深刻化するであろう。

写真-4.貴重なドラゴンツリーとアンチアトラスの山々

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