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モロッコ水物語

自然シリーズ-降水量

2-1.降水量

モロッコは冬場に雨季を迎える地中海性気候であるが、アトラス山脈の南東部は完全な砂漠気候となる。図‐1はモロッコ全土の降水量分布を示したものである。この図からも明らかなように、モロッコではリフ山脈と高アトラス山脈地域で降水量が多くなっている。特に、北部のリフ山脈地域では年間800mmもの降水量を有しており、その結果この地域には森林も発達している。また、有名なモロッコのマツタケはリフ山脈のみに自生し、毎年11月頃に最盛期を迎え、一部は日本にも輸出されている。この地域にマツタケが生育できるのは他の地域と比べて雨量が多いことによる。

一方で、アトラス山脈より東部と南部は広大なサハラ砂漠の影響を受けており、降水量が極端に少なくなっている。しかしながら、アトラス山脈の降雪によって、大小さまざまな河川が発達していることから、広大なオアシスがエルラシーディアとザゴラ地域に形成されている。ただし、この地域の河川は上流部では比較的水量が豊富であっても、流下するにつれ水無川へと変化する。

図-1.モロッコの降水量の分布(出典:水利庁)

次に、1935年から2006年までのモロッコの年間降水量の変動について述べる。モロッコでは1935年より気象観測が開始され、降水量のデータも比較的揃っている。そして、これらのデータの内、マラケシュ地方のデータを協力隊員の七條寛氏が分析した。その結果、1975年を境に降水量が減少した地点と殆ど変化の無い地点が鮮明に分かれた。降水量が減少した地点は平均500mm前後の雨量を有する場所であるのに対し、変化の見られない地点の雨量は200mm程度である。従って、これらのデータからは必ずしもモロッコ全体で急激な降水量の減少が生じているとは明言できないが、水源となっているアトラス山脈の積雪期間が短くなっていることは確かである。モロッコでは、山岳部の降水量や積雪量を正確に把握することは困難であるが、例えばスキー場の営業日数やマラケシュからワルザザットに向かう途中のティシカ峠における道路の閉鎖日数や除雪車の稼動日数を分析すれば、より具体的な変化を知ることも可能である。

図-2.典型的なモロッコの降水量の特徴(出典:七條寛氏)


写真-1.2月末の高アトラス山脈と岩肌のみのAnti Atlas山脈

写真-2.雨季の草原と1年中乾燥したモロッコ南部の平原

写真-3.豊かな河川の流量と枯渇した河川

  モロッコでは雨季と乾季が明確に分かれており、雨季には広大な大草原が広がる。この時期しか見ていない人達は恐らく、モロッコを豊かな農業国と捉えることであろう。しかしながら、降水量が極端に少ないアトラス山脈から東部及び南部を視察すれば、あまりのギャップの大きさを確認することができるであろう。

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