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スーダンの水事情

各州の水事情-センナール州

センナール州の中心都市であるセンナール市は、かつて16世紀から19世紀にかけて栄え、現在のハルツーム州、センナール州、白ナイル州、北コルドファン州一帯を領有したセンナール王国の首都として有名である。現在の州都は州の中央部に位置するシンジャ市になっており、州水公社や財務省を除く主要な行政機関は同市にここに集中している。センナール州は、スーダンの南部に位置し、北部より時計回りにゲジラ州、ゲダレフ州、青ナイル州、白ナイル州と州境を接し、南東部ではエチオピアと一部国境を接している(図1参照)。

写真1.センナールダム

州の総面積は九州とほぼ同じ約4万km²であり、総人口は約129万人(2008年統計)で①El Dindir、②Abu Hajjar、③El Suki、④Sinja、⑤West Sennar、⑥East Sennar、⑦El Dali and Mazmoonの7つのロカリティー(2011年11月時点) がある。センナール州では、青ナイル川が南方から北方に向かって流下して州を東西に二分しており、この青ナイル川がセンナール州の主要な水源となっている。またセンナール州近郊では1925年にSennarダムが建設され、そこから延びる灌漑用水路は北方のゲジラ州にまで至り、有名なGezira灌漑計画の重要な農業用水源としてスーダンの穀倉地帯を支えている。

図1. センナール州の位置

4-4-1. 地形

図2. センナール州の地形(出典:SRTM 標高数値データより作成)

センナール州は、そのほとんどが海抜400~500mの平坦な地形を有しているが、州南東部の①El Dindirロカリティーではエチオピア国境に向かって緩やかに標高が増し、500~600mの平原を形成している。センナール州のほとんどは平野であり目立った山地・丘陵等は形成されていないが、州南東部の白ナイル州との州境付近で標高約600mの「Moya山」が認められる。
州内を流れる代表的な河川は、州を東西に2分する青ナイル川でエチオピア高原を源流として、青ナイル州を流れた後にセンナール州内を北方向に流下する。青ナイル川はその名が示すような青色を呈していないが、隣の白ナイル州を流れる白ナイル川と比較すると黒色系の粘土・シルトを多く含んでいるために、青ナイル川と名付けられたとされる。
センナール州には青ナイル川の東方に位置するディンディール川が流れており、この川もエチオピア高原を源流部としている。①El Dindirロカリティーの南部の流域は、自然豊かな国立公園として指定されている。

図3. 地形断面図 (出典:SRTM 標高数値データより作成)

4-4-2. 地質

センナール州の地質は、下位より先カンブリア時代からカンブリア紀の複合基盤岩類、その上位は、中生代白亜紀のヌビア砂岩層となるが、これらの地層はセンナール州の殆どで認められない。表層地質は最上位の第四紀の粘土や砂礫、青ナイル川やディンディール川に運搬された河床堆積物によって構成されている。最も広範囲に分布するのが比較的地下水に富んでいる河床堆積物および粘土、砂礫層である。地下水に乏しい複合基盤岩類は青ナイル川からの恩恵に乏しい州の東部に広く分布し、特に⑦El Dali and Mazmoonロカリティーでは、そのほとんどが地下水開発の困難な複合基盤岩類に覆われている。このため井戸は設置されておらず、給水は青ナイル川から延びるパイプラインにより賄われている。
2012年には中国の支援の下、同地域では青ナイル川からダリ地区に延びる約80kmのパイプラインが新規に建設され一部の地域では給水事情の改善が報告されている。

図4. センナール州の水理地質図

(出典:Hydorgeological Map of Sudan, Edition 1989 (S=1:2,000,000) “Water Resources Assessment
and Development Program in Sudan”)

図5. センナール州の地質図

4-4-3. 降水量と気温

1960年から1990年に記録されたセンナール市の月別の平均降水量と平均気温は、図6に示す通りである。州の年間平均降水量の420mmは、ハルツーム市の約2倍であるが、降雨のほとんどは5月から10月の雨季に集中しており、乾季である11月から4月には、ほとんど雨は記録されない。このためセンナール州はケッペンの気候区分においては、砂漠気候に属している。気温は年間を通して非常に高く、年平均気温は28.8度、そして月の平均最高気温が30度を下回ることはない。スーダンの他州と同様に4月から5月に最も気温が高くなり一日の平均最高気温は40度を超える。その後雨期に入ると気温は一端8月まで降下し、雨期が明ける10月に向かって再び上昇する。

図6. センナール州センナール市の平均降水量と気温(出典:World Meteorological Organization)

4-4-4. 水事情

(1) 州全体

2010年に発行された州水衛生計画(2011-2016)によると2010年のセンナール州の安全な水へのアクセスは、全体で約82%(都市部約93%、地方約79.3%)、水消費量は49 (ℓ/日/人) とスーダンの中では比較的高い数値となっている。
主要な給水施設はウォーターヤードとなり、これは全体の約91%の給水量となっている。ハンドポンプとウォーターヤードによる給水量によって水源の93%が地下水となっているが、2012年に中国の支援によりシンジャ市に建設された浄水場が本格的に稼働した場合、その割合は大幅に変わることが予想される。

表1. 白ナイル州の給水施設と稼働率
No. ロカリティーウォーターヤード緩速濾過施設 浄水場
稼働不稼働合計稼働率稼働不稼働合計稼働率
 合計56117673776%808100%1
①El Dindir516912043%101100%0
②Abu Hajjar41115279%101100%0
③El Suki1103014079%000–0
④Sinja76 25 101 75%1 0 1 100%0
⑤West Sennar120 10 130 92%1 0 1 100%1
⑥East Sennar157 30 187 84%4 0 4 100%0
⑦El Dali and Mazmoon6 1 7 86%000–0

図7. センナール州の1日当たりの給水量 (出典:Water, Sanitation and Hygiene Sector Strategic Plan,2011-2016)

(2) 都市給水

センナール州では、①El Dindir、④Sinja、そして⑤West Sennarの3つロカリティーで都市給水が実施されている。州の代表都市であるセンナール市では、青ナイル川を水源とした浄水場よりセンナール市の都市部へと各戸給水が行なわれている。浄水場では適切な水処理はされておらず、非常に濁度の高い青ナイル川の水を塩素滅菌のみを実施し各家庭へと給水している。したがって水道から供給されている飲料水の濁度は高く水質は必ずしも良いとは言えない。センナール市以外のシンジャとディディールについては、地下水を水源として各戸給水が行われていたが、シンジャ市では郊外に2012年に中国の協力によって建設された浄水場による給水へとシフトする予定だが、2013年3月現在では、まだ本格的な給水は実施されていない。センナール水公社によるとこの浄水場の処理能力は2万m³/日で、シンジャへ1.5万m³/日、ダリ地区等へ5000m³/日を配水する予定となっている。2010年の統計によると、水消費量は50(ℓ/日/人)弱と報告されており、センナール州水公社は、2016年までに62 (ℓ/日/人)に改善させることを目標としている。

表2. センナール州の都市給水
給水人口給水施設総給水量
(m³日)
漏水・家畜による消費
(m³/日)
実際の給水量
(m³/日)
一人当たりの
水消費量
(ℓ/日)
ウォーターヤード給水量
(m³/日)
緩速濾過
施設
給水量
(m³/日)
浄水場給水量
(m³/日)
249,848 46 9,478 1 576 1 4,34713,825 2,074 11,751 47

出典:Water, Sanitation and Hygiene (WASH) Sector Strategic Plan 2011-2016

写真2.センナール市の浄水場

写真3.センナール市近郊の緩速砂ろ過施設

(3) 地方給水

センナール州の地方給水は、都市部のそれとは異なり地下水を主な水源としている。給水施設の数は、その中でもウォーターヤードによる給水がそのほとんどを占めている(表3,表4参照)。「センナール州水・衛生計画(2011-2016)」によると、2010年における同州地方部の1人当たりの1日の水消費量は約30ℓと報告されスーダンの他州の地方部と比較すると高い数値であるが、給水事情が悪い②Abu Hajjarロカリティーでは1人当たり僅か9ℓ/日、一方で⑥East Sennarロカリティー109ℓ/日と地域による格差が問題となっている。基本的にセンナール州での給水施設の運営は、その給水施設を管轄する水公社ロカリティー支局に委ねられている。このため給水施設の維持管理についてはロカリティー支局の財政や機材によるところが大きく、適した維持・管理が必ずしも実施できていないことが問題となっている。これに対し、州水公社は2016年までに「500m以内の給水施設から1人当たり45ℓ/日の給水」を目標として掲げ、給水施設の維持・管理強化および新設を進めている。また、住民と家畜が同じ水栓を使用しているウォーターヤードも多く、こういった給水施設の周辺には家畜の排泄物が散乱しているのが現状である。そのため衛生面に対する配慮も今後の重要な課題となっている。

表3. センナール州の地方給水
給水人口給水施設総給水量
(m3/日)
漏水・家畜による消費
(m3/日)
実際の給水量
(m3/日)
一人当たりの水消費量
(ℓ/日)
ハンド
ポンプ
給水量
(m3/日)
ウォーター
ヤード
給水量
(m3/日)
1,092,012 1,098 1,266 464 49,697 50,963 17,837 33,126 30

出典:Water, Sanitation and Hygiene (WASH) Sector Strategic Plan 2011-2016

表4. センナール州の地方給水(ロカリティー別)
No.ロカリティー人口
(2010)
総給水量
(m3/日)
漏水・家畜による消費量
(m3/日)
実際の給水量
(m3/日)
一人当たりの
水消費量
(ℓ/日)
合計1,092,013 50,963 17,837 33,126 30
①El Dindir145,170 3,935 1,377 2,558 18
②Abu Hajjar199,774 2,838 993 1,845 9
③El Suki152,288 4,873 1,706 3,167 21
④Sinja191,038 4,774 1,671 3,103 16
⑤West Sennar225,396 13,659 4,781 8,878 39
⑥East Sennar103,658 16,207 5,672 10,535 102
⑦El Dali and Mazmoon74,689 4,677 1,637 3,040 41

写真4.1950 年代に掘削された井戸

写真5.ロバを使用した水汲み

(4) 水道料金

センナール州の水道料金システムは、センナール市やシンジャ市等の都市部では各建物に接続されたパイプ口径による定額制が、地方部ではドラム缶やジェリカン毎に課金される従量制が主流となる(表5参照)。この他に企業やレストラン、ホテル等にはその事業規模に応じた定額の水道利用料金が月毎に課されている。

表5. センナール州の水道料金
ロカリティー支局 管網接続
(SDG/Month)
共同水栓
※2(SDG/Drum)
El Dindir 30SDG (1 インチ給水管)
26 SDG  (3/4 インチ給水管)
15 SDG (1/2 インチ給水管)
0.5 SDG
Abu Hajjar15 SDG 0.5 SDG
Suki15 SDG 0.5 SDG
Sinja45 SDG (1インチ給水管)
25 SDG(3/4 インチ給水管)
15 SDG (1/2 インチ給水管)
1 SDG
Central Sennar 45 SDG (1 インチ給水管)
25 SDG  (3/4 インチ給水管)
15 SDG (1/2 インチ給水管)
0.5 SDG
West Sennar15 SDG 1 SDG
East Sennar15 SDG 0.5 SDG
Mazmoon and Dali 40 SDG 1 SDG

※1 センナール州の水道料金は、2012年4月より改定
※2 1Drum≒45ガロン≒200 リットル

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