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スーダンの水事情

スーダンの多様な自然-白ナイル川

白ナイル川は厳密には、南スーダンのマラカルの西方約120kmに位置するノ湖からスーダンの首都ハルツームで青ナイル川と合流するまでの約1000kmの区間とされているが、広義ではビクトリア湖上流部を源流としてハルツームに至るまでの約3700kmの区間を示す。本章では後者の定義を基に説明する。

1-8-1. 源流域

白ナイル川(ナイル川)の源流については諸説あり、現在ではビクトリア湖南東のルワンダ国に流れを発するカゲラ川という説が有力だが、こちらについては「1-6 ナイル川」で詳しく述べられているため、ここでは割愛する。

1-8-2. ウガンダから南スーダン

写真1. マーチソン・フォールズ (出典:Google Earth)

ウガンダのビクトリア湖南岸ジンジャ付近から北方に流下する白ナイル川(別名:ビクトリア川)は大地溝帯の西にあるキオガニ湖を経たのち、流下勾配を増しアルバート湖に流入し、アルバート湖を介してセキリム川と合流する。キオガニ湖とアルバート湖の間では、比高差120mに達するマーチソン・フォールズがあり、ここは有名な観光地となっている。その後ウガンダ国内では、標高600m程の平坦な地形をしばらく北へ流下し、南スーダンへと進み首都ジュバを経た後、蛇行を繰り返す。その後スッド(大湿原)を形成しマラカルの手前のノ湖に流入し、ここでエチオピア高原を源流とするソバト川と合流する。白ナイルと名付けられた理由は、このソバト川が運搬する白色系の砕屑物の混入により川が白っぽく見えることに起因すると言われている。したがって、厳密に述べるとこのノ湖から「白ナイル川」が始まる。

図1. 白ナイル川の流域図

スッドは、平坦な平原に形成された世界最大級の湿原で、雨季には最大で13万km²に達する。ここで、白ナイル川は蒸発散によりその流量を半減することになる。また、白ナイル川はスーダンと南スーダンを結ぶ重要な河川交通路になっているが、スッドでの植生や浮島の出現により船舶の航行を困難にしている。一方で、スッドは人を寄せ付けない厳しい自然条件により開発の手を逃れたため、現在も野生動物の宝庫として貴重な自然が残されている。
南スーダン(独立前はスーダン)ではかつてスッドでの蒸発量を軽減し白ナイル川の流量を増大させるため、さらには安全な河川交通路を確保するためにスッドに延長約350 kmの運河の建設が実施されていた。この計画は「Junglei運河計画」とよばれ、1978年に着工し全体の2/3を掘削した後、スーダンの内戦の影響によって中断された。もしこの運河が完工した場合、スッドで長い間留まっていた白ナイル川の水は運河により強制的に流されるため流速が増し、スッドでの蒸発量が軽減される。その結果、白ナイル川の流量は増大するが、流域の湿原は干上がってしまい貴重な自然が失われるとことになる。さらに湿原の消失に伴って、スーダンからの沙漠化が南スーダンへと進行することも懸念されており、現在でもこの計画は凍結されたままとなっている。スッドを超えた白ナイル川は、南スーダンの北部の主要都市マラカル付近を流下後に、スーダン領内に入る。

図2.白ナイル川の勾配(Google Earthより白ナイル川の高度プロファイルを作成)

1-8-3. スーダン国内

スーダン国内における白ナイル川は、主に白ナイル州内を北方向に流下し、青ナイル川との合流地点であるハルツームに至る。白ナイル川はスーダン国内で約400㎞に渡り流れているが、その比高差は10mに満たない。 白ナイル州の主要都市であるコスティ市ではスーダン国内最大級の河川港が整備され、南スーダンの首都ジュバに至る約1400㎞の距離を2週間から3週間で結んでいる。また、コスティおよびラバック周辺では世界最大規模の砂糖会社であるケナナ砂糖会社のサトウキビ畑が広がり、白ナイル川からの取水による灌漑用水路が網の目のように張り巡らされおりスーダンの主要産業である製糖業を支えている。 コスティから下流の白ナイル川はハルツーム手前約40㎞でJebel Auliaダムを経てハルツームで青ナイル川と合流する。

1-8-4. 白ナイル川の流量 

白ナイル川はナイル川最大の支流であるが全体の流量については青ナイル川に及ばない。特に雨期においては、青ナイル川の流量の方が遥かに多く、年間の合計流量についても白ナイル川の流量は青ナイル川の流量の60%程度であり(図3参照)、アトバラ川を含めたナイル川の全流量の内30~40%にすぎない。しかしながら白ナイル川の流量は年間を通して137億m³から302億m³と安定しているため、青ナイル川の流量が激減する1月から5月の乾季における白ナイル川による給水量は全体の70%以上を占め、スーダンはもちろんのこと下流のエジプトにとっても極めて重要な水源である。

図 3.青ナイル川との合流地点の流量
(出典:The Hydrology of the Nile by J. V. Sutcliffe & Y. P. Parks. IAHS Special Publication no. 5, 1999)

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