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モロッコ水物語

モロッコの温泉-Moulay Yakoub温泉

Moulay Yakoub温泉

 モロッコの温泉はその殆どが断層や大規模な構造線付近に点在しており、日本のような火山性の温泉は皆無である。その意味においては、四国の温泉と類似しているとも言える。また、世界中の温泉保有国の中で、日本ほど高度な温泉文化を長年にわたり発展させてきた国は稀であろう。このような温泉文化をこよなく愛する日本人にとって、モロッコで唯一擬似和風の温泉気分を体験できる場所がある。それは、フェズから西へ20kmの場所にあるMoulay Yakoub温泉である。この温泉はモロッコを代表する有名温泉であり、恐らくモロッコ在住の日本人の中には、この温泉を何度も訪問された方も多いと思われる。

Moulay Yakoubには温泉街が形成されており、そこにはホテルや簡易宿泊所、レストランや土産物屋が比較的急な坂道にそって密集しており、「温泉饅頭」や「温泉卵」さえあれば、何ら日本の温泉街と遜色は無いほどの賑わいを見せている。この温泉街を更に下ってゆくと、立派な施設が見えてくる。そして、施設の受付でサービス内容を確認すると、入浴料は240DH、マッサージ料が300DHとなっており、私は540DHを払って、中に進んだ。内部は広く、比較的清潔であり、水着着用をいとわなければ、結構リラックスもできる。

写真-20.Moulay Yakoubの温泉街

この温泉施設の内部は密閉された空間であり、強烈な硫化水素(イオウ)の匂いが日本の温泉を彷彿させてくれる。一方、温泉の水質に着目すると、水温が53℃もあり、これは私がモロッコで測定した地下水の最高値でもある。また、非常に塩分濃度が高く、それを示す電気伝導度は42,000μS/Cm、塩分濃度は2.7%であった。この値も水温同様最高値であった。高い塩分濃度を観察できる場所が、施設内部にある「かまぼこ状」のサウナである。このサウナは、岩盤をトンネル状に掘削した天然サウナであり、その岩盤から塩分を多く含んだ温泉が湧き出している。

このように当温泉は一見水量・水質共に文句なしの温泉と考えられてしまいそうであるが、この温泉付近で1990年代の後半にFesの旧地方水利局が飲料水供給目的で井戸を建設した。ところが、この井戸からは清水ではなく大量の温泉が湧き出し、その結果、既存の温泉が枯渇する大変な事態が発生した。当然、温泉で潤っていた地元からは激しい井戸建設の反対運動起こり、最終的にこの井戸は埋め戻されることになった。そして、この教訓から水道公社(ONEP)は日本の国際協力銀行(JBIC)の融資を受けて、他の水源から飲料水を供給するプロジェクトを実施した。

写真-21.Moulay Yakoub温泉の内部の様子(出典:案内用パンフレット)

  最後になるが、表-1にはメクネスからタザ周辺の主要な温泉の水質を示している。この地域には地球内部から高温のマグマが比較的地表面近くまで押し出していることが地質図からも判断できる。このような場所はモロッコには意外と多く今後の調査次第によっては新たな温泉も期待できるであろう。

表-1.メクネス、フェズ、タザ周辺の温泉の水質

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