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モロッコ水物語

伝統的取水施設-風力ポンプ

TiznitからTafrouteに向かう途中の高原地帯にKerdos地方は位置している。この地域は東西方向に細長く開けた標高1,200m前後の盆地であり、モロッコでも有数の「風の銀座」となっている。当然ながら人々はこの豊富で無料の資源を昔から有効に活用してきており、その代表例が風車を利用した井戸水の揚水であった。

現地での聞き取り調査によれば、この地域に風車が最初に導入されたのはフランスの保護領時代であり、また、本格的に設置されるようになったのは1970年代とのことである。現在この地域には250基もの風車が設置されており、モロッコで最も風車の密度が高い地域となっている。風車の種類には水平軸風車と垂直軸風車の2種類があり、モロッコで多く導入されているのが水平軸風車の一つである多翼型風車である。これは、アメリカの中西部で開発された機種であり、主に農家や牧畜用の飲料水を確保するために開発されたものである。

一度でもKerdos地方を旅したことのある日本人であれば、国道沿いに林立している風車の数の多さに驚かされたことであろう。しかしながら、車窓から眺めるのどかな風車のある田園風景とは逆に、実際には90%もの施設が様々な理由によって稼動していないのが現状である。風車が故障する最大の原因は冬季における暴風雨であり、この強風によって回転翼が破壊されるそうである。実際にこの地域を冬季に調査してみると、台風並みの強風と低温に屋外での作業は困難を極め、この強風が風車を破壊することを容易に理解できた。また、モロッコでは地方電化が急速に展開されており、その結果、安定した電気の供給が可能となった現在、「風任せ」の気ままな風力エネルギーにて飲料水を確保する度合いも確実に低下してきている。

現在、持続可能なクリーンエネルギーとしての風力は地球温暖化を緩和する資源として太陽光と同じように注目を集めており、世界中に風力発電装置が建設されている。アメリカ中西部の開拓時代に考案された多翼型の風力ポンプがモロッコではその使命を終えようとしているが、このシステムは地方電化とは無縁の途上国においてはまだまだ十分活用できる技術であり、更なる機材の革新とコスト削減が今後の課題といえる。

写真-25.Kerdos地方の風車の分布とモロッコの多翼型風車

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