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モロッコ水物語

モロッコのダム-地下ダム

地下に商店街があれば地下街、道があれば地下道、電車が通れば地下鉄、水があれば地下水など地下に関係する言葉は多い。それではダムが地下にある場合、何と呼べば良いのであろうか。答えは地下ダムであるが、この名前は地下鉄や地下街ほど一般の認知度は低く、その存在を知っている人は少数と言える。その原理はある程度の大きさの容器をビー玉で満たし、その隙間に水を溜めるようなものである。具体的には、砂や砂利で埋め尽くされた川の地中部分に水密な壁を作り、地下水の流れを止めて、砂・砂利の空隙に水を溜める。地表面に貯水される訳ではないために、土地や家屋の水没問題が無いのが大きな特徴である。同時に多くのダムで問題となる貯水池の堆砂問題が無い。また、乾燥地のダムに特有な湖面からの水分蒸発の問題も無い。ただし溜められた水を使うにはポンプを使って汲み上げが必要である。その動力には電気や油が普通だが、ここで最近ソーラー発電が着目されてきている。汲み上げられた水を使って飲み水や農業に使えば、貧しい乾燥地の救いの神になる。そのイメージを図-13に表した。

図-13.地下ダムの概念図(出展:長崎県ホームページ)

このような特徴を有する地下ダムは、モロッコのような乾燥地域に最適なシステムであり、 事実、モロッコ政府は地下ダムの利点に関心を持っており、Tataや Taroudantの南部に数箇所の地下ダム候補地を考えている。その一つである、 Sus川上流のImin Taouzaのサイト写真を示した。写真からも明らかなように、システムは広い河道に堆積した砂層の中に水を溜めるものである。

写真-29.地下ダムの建設予定地

モロッコでは写真にある様なサイトは数多くあるが全てが地下ダムの適当になるとは言えない。ここで特に気を付けなければならないのは、①溜める水が塩水等の使えない水でないこと、②堆積した砂層の基礎岩盤が水を逃がすような状態でないこと(例えば、空洞・逃げ道の多い石灰岩は特に注意)、③溜める空隙は5~10%と少ないので貯 留量に較べて大きな体積がいることなどである。地下ダムの場合、色々な調査を実施してもその対象が広範囲で、しかも時々深い地層になることがあ るために、簡単には適・不適を判断することの難しい見えない地下の地質や水質がポイントであることから、その分野における専門家の経験豊かな判断が必須である。当然のことながら、多くのダム技術者を有しているモロッコでさえ、地下ダムの専門家は皆無であり、未だに地下ダムは建設されていないために、今後はこの分野の技術者の育成も重要となる。

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